今回の大会で上位に入賞した人のデッキを紹介します。また、この大会でヘッドジャッジを務めた私が、それぞれのデッキについて簡単に解説を付けています。勝ち抜けたデッキのどこが強いのかを、学び取ってくれれば幸いです。
チャンピョン:司晃さん
「White Dragonの白ちゃんデッキデシ」
メインボード60枚
12 Swamp
2 City of Brass
2 Undiscovered Paradise
4 Black Knight
4 Knight of Stromgald
2 fallen Askari
2 Skulking Ghost
4 Dauthi Slayer
4 Dauthi Horror
4 Dauthi Marauder
4 Hidden Horror
1 Disenchant
1 Armageddon
2 Bad moon
3 Incinerate
1 Song of Blood
4 Diabolic Edict
4 Dark Ritual
サイドボード15枚
2 Energy Flux
2 Dread of Night
3 Constant Mists
2 Disenchant
2 Lobotomy
2 Tombstone Stairwell
2 Chill
黒のウイニーに、クリーチャーやアーティファクト・エンチャントの除去の為に他の色をちりばめたデッキ。だが、'97の世界大会を制した、いわゆる5CBと言う奴とは少し違う。クリーチャーを、シャドーや飛行・プロテクション等なんらかの回避能力を持つ2マナでパワー2のクリーチャーを中心に構成している。2マナ以外のクリーチャーは3マナで4/4のHidden Horrorと、同じく3マナでパワー3のシャドーであるDauthi Marauderである。この手の5色デッキの定番である、場に出たときに他のパーマネントを除去するクリーチャー(Man-o'-War,Ukutabi Orangutan, Necrataalなど)や、クリーチャー除去と場に出たときに何らかの効果を持つクリーチャーを再利用できる能力を持ったShadow Guildmageを入れていない。そもそも、黒以外の色が出るランドの数が4枚とかなり少ない。それは、必要があるまで他の色の存在を隠すという事を可能にする。単なる黒のシャドーウイニーと思って油断していたら、いきなりArmageddonやDisenchantを食らってしまう、と言うことになる。
また、50%近いクリーチャー含有率を有効に生かせるカードも多い。メインボードのSong of Bloodなど、期待値で2点のパワーを上昇させる。そして、サイドのTombstone Stairwell。自らのクリーチャーを少なく押さえてWrath of Gadなどを連発してクリーチャーを除去するコントロール型のデッキに対して、一発逆転のカードアドバンテージを獲得する。思えば、'97のACAP香港大会で塚本プロのカウンターポストを下して優勝したネイザン・ラッセルのデッキも、このカードを組み込んだ黒ウイニーであった。
サイドボードもなかなか良く練られている。 Constant Mistsは、ノーガードの殴り合いになりがちな対白や対緑に対して有効である。特に緑単の必殺技Overrunを1枚で封じる事ができる。しかもバイバック付きだ。Disenchantを3枚に押さえてEnergy Fluxにしてあるのも興味深い。このカード、アーティファクトを多用するデッキ、特にマナロック系のデッキやメダリオン・ブルーには致命的なカードである。優秀なカードなのだが使用者は少なく、今大会では彼一人である。自分もアーティファクトを使っていると使いにくいが(そう言うデッキはHurkyl's Recallをいれる)、Cursed Scrollにも効く良いカードである。このほか、Lobotomyも含め、青いコントロール系デッキ対策が多いのは、彼がそれを警戒していると同時に、CapsizeやMan-o'-Warで戻されると弱いHidden Horrorとの交換要員として必要だからであろう。
ファイナリスト:山本琢磨さん
「なぜオレには5枚もある!(泣)覚醒デッキ(ウソかも)」
メインボード60枚
2 Awaking
3 Stampeding Wildbeast
4 Wall of Blossoms
3 Uktabi Orangutan
4 Quirion Ranger
4 Birds of Paradise
4 Spike Feeder
1 Survival of the Fittest
4 Tradewind Rider
4 Man-o'-War
2 Impulse
3 Power Sink
2 Capsize
12 Forest
8 Island
サイドボード15枚
4 Chill
3 Phyrexian Furnace
2 Tranquil Domain
3 Sctagnoth
3 Propaganda
青のバウンズ能力(Tradewind RiderやCapsizeなどでカードを手札に戻すこと)を緑の覚醒でサポートするデッキ。今の時期、青緑と言ったらこのデッキ以外は考えられない。これによって毎ターン土地を戻す戦術は「マナ・オーバーロード」と呼ばれる。ランドは1ターンに1枚しか場に出せないので、緩やかにマナロックがかかり、最終的に1マナのカードしか使えなくなる。そうなってから他のパーマネントを戻されると、再び使うこともできない。
この種のデッキはAwaking-Capと呼ばれ、青を主体にCapsizeを多用するデッキであるのが一般的である。Awakingの効果が発動するのはアンタップフェースの最初であり、マナソースしか割り込めない。TradewindRiderはAwakingが何枚張ってあっても1回しか使えないが、張ってあるAwakingの枚数分だけマナが出せると言うことは、アップキープ中に何回でもCapsizeを使うことが出来ると言うことだ。
だが、このデッキはTradewindRiderを主軸として、青のカウンターよりむしろ緑のクリーチャーがメインのデッキとなっている。手札破壊やカウンター、ロックなどコントロール系も多い全国・全世界レベルの大会ならともかく、クリーチャーとバーンしかない山梨の大会では、こっちの方が断然と有利である。
Stampeding Wildbeastはエンドカードとなる他、「場に出たとき〜する」と言うカードを何回でも利用できるようになる。特にこれでWall of Blossomsを毎ターン召喚する事は、驚異的なカードアドバンテージを獲得してくれる。他にも、Ukutabi Orangutanでアーティファクトを破壊したり、カウンターと1つだけ使用したSpike Feederを回収したりする事が出来る。
Spike Feederもまた、多用な使い道がある。死ぬときは4ライフに変換できるし(これは、同じ3マナのBottle Gnomesより1ライフ多い!)、スパイクの基本能力である+1/+1カウンターの移し替えもできる。このデッキの場合、場に出すことで役目の半分を終えたMan-o'-Warに移す事によって、2/2先制攻撃の白騎士・黒騎士を殺し、2/2側面攻撃のFallen AskariやSuq'Ata Lancerを相打ちにとる。同じく、役目の半分以上を終えたWall of Blossomsにのせる事により、2/1のパンプ・ナイト(白のOrder of the White Shieldや黒の Knight of Stromgald、及びこれと同じ能力を持ったFEのカードの事、1マナで先制攻撃を得て、2マナで+1/+0の修正を受ける)を殺し、Birds of ParadiseやQuirion RangerなどをProdigal SorcererやFireslinger、緑と黒のGuildmageの1ダメージ系クリーチャーやNausea、Simoonから守ることもできる。
Quirion Rangerも良いクリーチャーである。序盤はバーパラを起こし、また1度使ったForestを手札に戻して再び場に出すことでマナを加速させることが出来る。このデッキの場合、1度使ったTaredewindRaiderを、再び使用する為にもつかえる。また、Skulking GhostやTar pit Warriorを殺すのにも使える。
ある意味、これだけ黒ウイニーに勝つ要素が揃っておきながら(実際、準決勝では後藤氏の黒ウイニーを破った)、決勝で敗れたのは、運悪く対策のないシャドークリーチャーが多く出たからである。事実、このデッキはシャドー対策が薄い。1枚くらいMaze of Shadowsを入れておいても良かったと思う。白のシャドーにEmpyrial Amrorを付けるデッキは黒シャドー以上に危険だ(もっとも、Man-o'-WarやTradewind Riderの様なバウンズ能力を持ったカードがあれば、アーマースキンシャドーなどには対処できるので問題はない。実際、準々決勝では野田氏のデッキを破っている。これには、単に野田氏のデッキの性能がこの手のシャドークリーチャーを多用したデッキの中では劣っていたから、と言う解釈も成立する)。そこまで極端じゃなくても、クリーチャー対策として、Legacy's Allureを入れておけば1枚で2体のシャドーを処分できたであろう。また、Quicksandも良いカードである。
サイドボードも、目的がはっきりしている。Chillは今回多かったバーンデッキ対策、Propagandaはウイニー対策、Scragnothはカウンター対策である。赤対策がHydroblastでないのは、バウンズでマナを締め上げるデッキであるから、Chillの方が有効なのであろう。そして、Phyrexian Furnace。これは、黒系の墓地を再活用するデッキ、特にRecurring NightmareやLiving Deathを使うデッキの対策であろう。黒ウイニーの決め技となるTombstone Stairwellや、バーンデッキのHammer of Bogardanにも効く。
セミ・ファイナリスト:後藤光さん
「黒3色ウイニー」
メインボード60枚
11 Swamp
3 City of Brass
1 Undiscovered Paradise
1 Gemstone Mine
2 Cinder Marsh
1 Salt Flats
1 Sulfurous Springs
4 Black Knight
4 Knight of Stromgald
2 Arg Rider
3 Dauthi Slayer
2 Abyssal Specter
1 Sorceress Queen
1 Bad moon
2 Drain Life
2 Terror
3 Diabolic Edict
2 Dark Ritual
3 Disenchant
4 Incinerate
2 Earthquake
4 Nevinyrral's Disk
1 Cursed Scroll
サイドボード15枚
3 Dread of Night
2 Gloom
2 Perish
1:Terror
1 COP:Black
2:COP:Red
1:Scabland
3:Pyroblast
優勝者のデッキと同タイプのデッキ。こちらは、クリーチャーを、特にシャドークリーチャーを大幅に削って、変わりにクリーチャー除去カードを多めにしている。そして、リセットカードであるNevinyrral's Diskを4枚入れてある。
メインボードにはSorceress Queen以外には謎なカードはなく(と言っても、ウイニー戦術の弱点の一つである、後半の巨大クリーチャー対策になるので、それほど悪くはない。むしろ重いAbyssal Specterの方が問題かも知れない)、手堅くまとまっているのだが、サイドボードはすこし首をかしげたくなる。
ほぼ色対策カードだけでまとまっている。確かに手軽なのだが、自分のデッキとの相性を考えていない。例えば赤への対策としてCOP:Redが入っているが、これはバーンデッキには有効かもしれないが、スライタイプのデッキには有効ではない。それに、相手が赤白だったら、Gloomと併用することが出来ない。もう1つ、赤いデッキには土地破壊デッキもあるが、それへの対策にはならない。もっとも、このデッキは土地破壊に対して強いので問題ないが、そうなると1枚だけ入っているScablandが謎となる。サイドボード後の色比率変化に対応するためかもしれないが、赤マナが出る土地は8枚、白マナが出る土地は6枚と、これだけあれば充分であろう。
同じ事が黒への対策のCOP:Blackにも言える。ウイニーには対策になっても、手札破壊や土地破壊への対策にはならない。それ以前の問題として、カウンターのないデッキではCOPは決定的な対策カードにならない。COPへの対策はマジックの基本中の基本である。簡単に無効化されてしまうであろう。それと、そもそも黒への対策カードが1枚と言うところが問題だ。黒単デッキと対戦したとき、2枚入っているTerrorとの交換要員がない。
白への対策カードはDread of NightとGloomの2種5枚が用意されている。Dread of Nightは問題ないとしても、Gloomの方は謎だ。自分の首をしめることになりかねない。Gloomを使いたい相手にはDisenchantも使いたいはずである。また、先にも述べたとおり、赤や黒を白でサポートしているデッキ(そう言うデッキは白いクリーチャーを使っていることはなく、また、往々にしてメインの色よりサポートで入っている白の方に問題となるカードがある)には入れにくい。白相手なら無条件で5枚入れ替えているとも考えにくい。どういうサイドボーディングをするつもりだったのだろうか?
なお、対策に不備に関しては、メタゲームという考え方があり、これは「こういうデッキは大会には少ないだろうから対策しない」というものである。が、5色の色への対策カードを万遍なくサイドボードに用意しているこのデッキは、そう言う考えに基づいて構築されているとは思えないのである。
セミ・ファイナリスト:三森信宏さん
「バーン&ウイニー」
メインボード60枚
4 Mogg Fanatic
4 Jackal Pop
4 Raging Goblin
2 Fireslinger
4 Canyon Wildcat
2 Lowland Giant
2 Rathi Dragon
4 Kindle
4 Incinerate
2 Fireblast
4 Giant Strength
2 Goblin Bombardment
2 Furnace of Rath
4 Lotus Pedal
2 Dwarven Hold
2 Dormant Volcano
12 Mountain
サイドボード15枚
2 Disintegrate
2 The Hive
2 Shattering Pulse
1 Apocalypse
2 Havoc
2 Pyroblast
2 Fireslinger
2 Mountain
赤のクリーチャー&バーンデッキだが、スライになってはいない(各カードのコストは;1マナ:12枚、2マナ:20枚、3マナ:0枚、4マナ:6枚となっている)。テンペストのカードが多く含まれている事から、‘98年のプロツアーのロサンゼルス大会(レギュレーションはテンペストのみの構築戦)で優勝したデイヴィット・プライスのデッキを原型としたものだと思われる(このデッキはDuelist Japan vol.3に載っている)。
だが、謎なカードが多いのも事実である。 Duelist Japanの記事にも書かれているとおり、Giant Strengthのようなエンチャント(クリーチャー)はスタンダード環境では使いものにならない。 また、Lowland GiantもIncinerateのあるスタンダード環境では有効とは言い難い。これを使うなら、召還酔いのないTalruum Minotaurの方が良いであろう。
そして土地。 Dwarven Holdは、X点火力呪文が入っていないのだから、それほど役には立たないであろう。また、 Dormant VolcanoもWinter Orb環境下でもない限り有効なカードではないし、Winter Orbへの対策なら、他にも良いカードが沢山ある。原型となったプライスのデッキでは、Wastelandになっていた部分を換えたのであろうか。これなら、元のままの方が良いし、もしくはQuicksandに変えるのが良かったであろう。Convertion対策とも考えられるが、今やそんなカードを使うプレーヤーはいないし、それなら、Dwarven Ruinの方が有効である。
実はデッキ登録用紙には山の枚数が書いていなかった。もしかしたら、60枚デッキじゃないかも知れず、従って山の枚数も多かったかも知れない。Rathi DragonとFireblastを使っておいて12枚は少なすぎる。
サイドボードにも謎なカードが多い。 Disintegrateは、X点火力呪文の中でも特に評価の低いカードである。Buried Aliveデッキがかなりのポテンシャルを持っていた去年の夏ならともかく、今ではそれほど効果のあるカードではない。X点火力呪文をいれるなら、Kaervek's TorchかFireballの方が良いし、(そこまで考えていると思えないが)クリーチャーをゲームから取り除きたいなら先述のPhyrexian Furnaceの方が良いであろう。
The Hiveもまた、何の必要があって入れたのであろうか? COP:Redやプロテクション赤対策なら、原型となったデッキと同様にCursed ScrollやScalding Tongsを使った方が良かったであろう。 Nevinyrral's Diskと言う選択もあるが、これは重いくせにDisenchantされてお終いなので勧められない。まあ、 The Hiveよりはキャストも運用も軽いのだけど。
クオーター・ファイナリスト:武井雅章さん
「World in Fire」
メインボード60枚
4 Kindle
4 Incinerate
4 Fireblast
1 Hammer of Bogardan
3 Earthquake
1 Sonic Burst
4 Mogg Fanatic
4 Fireslinger
4 Suq'Ate Lancer
4 Ball Lightning
1 Stark of Rath
2 Waste Land
20 Mountain
サイドボード15枚
3 Shattering Pulse
3 Havoc
3 Ensnaring Bridge
3 Pyroblust
1 Sonic Burst
1 Earthquake
1 Firestorm
典型的なバーンデッキである。マナ効率の良いインスタント火力や召還酔いに影響されないクリーチャーで手早く相手のライフを減らし、手札が尽きた所で、Cursed Scrollによってゲームを決める。このカードは無色のダメージソースなので、COP:Redやプロテクション:赤への対策にもなる。
インスタント火力を中心に据えたバーンの場合、カード効率の悪さから、最後の数点を削れずに負けることが多い。また、1体のBottle Gnomeが出ただけでも展開が辛くなる。その点をカバーするカードとして、Cursed Scrollの他にもEarthquakeやHammer of Bogardanが投入されている。
Stark of Rathはなかなかの妙手である。このデッキとは相性が良い。何故なら、壊されて困るようなパーマネントはCursed Scroll以外ほとんどないからだ。カード効率の良い巨大クリーチャーを手軽に除去するのには最適のクリーチャーである。
クオーター・ファイナリスト:野田さん
「アーマースキンシャドー」
メインボード71枚
1 Soltari Trooper
4 Soltari Monk
4 Soltari Priest
4 Soltari Foot Soldier
3 Empyral Armor
2 Spirit Link
1 Ritrubution of the Week
3 Disenchant
4 Abeyance
4 Dauthi Slayer
4 Dauthi Horror
4 Endless Scream
2 Howl form Beyond
2 Terror
2 Spinning Darkness
1 Pox
4 Dark Ritual
2 Salt Flats
14 Plain
10 Swamp
サイドボード15枚
3 Necropotence
2 City of Brass
1 Wasteland
1 Dauthi Embrace
2 Flicking Ward
1 Living Death
2 Scroll Rack
2 Hidden Retreat
1 Howling Mine
>
謎の71枚デッキ。「アーマースキン」とは、白のウイニークリーチャーに"Empyrial Armor"を付けて殴るデッキのことを指し、WL発売当時はプロテクションを持つ騎士やファルコンが使用されたが、TPが登場してからは、 Soltari MonkやSoltari Priestと言ったシャドークリーチャー(プロテクションを持っているのが当然の前提になる)が使用される様になり「アーマースキンシャドー」と呼ばれている。青にタッチして書き換えやバウンズを組み込んだり、5色化して黒や赤でクリーチャー除去を強化したりしているバージョンも存在するものの、基本的に白単のデッキである。
だが、このデッキは白黒のデッキである。タッチしているという訳ではなく、黒にもかなりのウエイトを置いている。黒が2マナが必要な呪文はおろか、黒単でないと運用できないような、 Spinning DarknessやPoxなどまで投入されている。
黒を混ぜたことで、2マナのシャドークリーチャーの数はかなり増え、また、Empyrial Armor以外にもHowl form BeyondやEndless Screamでクリーチャー強化が可能となった。もっとも、これらのカードはEmpyrial Armor程の性能はなく、プロテクション黒を持つSoltari Monkには使用できないと言う欠陥もある。その上、結局デッキ総数が60枚を遙かにオーバーしているので、その効果の程は疑問符が付く。
また、黒によってクリーチャー除去手段を獲得している。だが、投入されているのTerrorとSpinning Darknessである。これらのカードは黒いクリーチャーやプロテクション黒を持つクリーチャーには効かないと言う欠点を持つ。こういうときに一般的に使われているDiabolic Edictが何故、使われていないか疑問だ。
このデッキはクリーチャーがシャドーだけなのも特徴である。が、これはデメリットが非常に大きい。ノーガードの殴り合いになることが多く、シャドークリーチャーは序盤は良いが、後半に出てくる大きなクリーチャーには劣る。特に黒いクリーチャーなどは、このデッキでは全く除去できない。また、エンチャントで強化するデッキは、対応して除去されたり、Man-o'-Warで手札に戻されたりすると、カードアドバンテージを大きく失う(一般的なアーマースキンデッキがプロテクションを持つクリーチャーを多用するのは、対応して除去されるのを防ぐためである)。実際、予選において後藤氏の赤を含んだ黒ウイニーに負け、決勝では山本氏のバウンズ型デッキに負けている。これは、負けるべくして負けた訳で、メタゲームの失敗であり、デッキの構築が不完全であったことを雄弁に物語っている。
サイドボードも、メインボード構築段階で入りきらなかったもを入れている、と言う感じで、苦手と思われる黒のクリーチャーデッキやMan-o'-Warなどの対策や、多いと思われるデッキへの対策などがない。NecropotenceやHowling Mineなど、どんなデッキが相手の時に使用するのだろうか? 私は、各色の色対策カードだけが詰め込まれた後藤氏のサイドボードに対して苦言を呈したが、このサイドボードはそれに輪をかけて酷い。
こんな酷いデッキで予選を突破したのだから、プレーヤーとしてはそれなりに優秀なのであろう。他の人のサイドボードを参考にし、メインボードを60枚に煮詰めたデッキを使用すれば、もっと良い成績を収めることが出来たかも知れないのが残念である。
クオーター・ファイナリスト:江藤潤
「赤黒ロック(仮)」
メインボード60枚
2 Black Knight
4 Dauthi Horror
2 Dauthi Marauder
2 Necroatog
2 Dark Banishing
2 Necromancy
2 Mogg Fanatic
4 Suq'Ata Lancer
2 Lighting Elemental
4 shock
4 Thunderbolt
2 Incinerate
2 Earthquake
4 Blood Lust
2 Scroll Rack
1 Cinder Marsh
10 Swamp
9 Mountain
サイドボードはなし
どの辺が「ロック」なのかは不明だが、軽いクリーチャーで手早くダメージを与え、豊富なインスタント火力で勝負をつける、なかなか手堅いデッキである。
黒のシャドークリーチャーや赤の召還酔いに影響されないクリーチャーなどは、手早くダメージを与えるのには手頃なクリーチャーである。Blood Lustはもともとタフネスが低くブロックされにくいシャドークリーチャーには最適の強化呪文である。
また、このデッキは速攻だけではない。Necroatogを入れることで、ゲーム後半においてはかなりの脅威となる。また、Necromancyは、自分のクリーチャーを再利用できるほかに、除去した相手の巨大クリーチャーを自分で利用することが出来る。巨大クリーチャーの除去には、火力呪文とBlood Lustの組み合わせが効果的である。タフネスが7くらいあっても除去できる。
また、このデッキにはサイドボードがない。デッキ登録用紙には「ざこあいてに必要なし」と書いてある。大した自信だが、実際にちゃんと決勝に進んでいるのは偉い。
クオーター・ファイナリスト:ハマさん
「はまでっき」
メインボード60枚
2 Bird of Paradise
4 River Boa
4 Jolrael's Centaur
2 Wall of Roots
3 Quirion Elf
1 Skyshroud Elf
1 Sylvan Library
1 Mirri's Guile
4 Incinerate
3 Disenchant
2 Armageddon
3 Mana Leak
1 Tradewind Rider
2 Meekstone
3 Winter Orb
3 Erratic Portal
1 Bottle Gnome
1 Mox Diamond
1 Fallwer Stone
2 City of Brass
1 Aderker Wastes
1 Kurplusan Forest
2 Brushland
2 Skyshroud Forest
1 Vec Townships
6 Forest
1 Mountain
1 Plain
1 Island
サイドボード15枚
1 Shadow Storm
1 Lhuagoyf
2 Scraagnoth
3 Light of Day
1 Reverth Damage
1 Hidden Retreat
1 COP:Red
1 Phyrexian Splicer
1 Chill
1 Gloom
1 Terror
1 Oracle en-Vec
The Final '97を席巻したマナ・オーバーロード型の5CGである(と言ってもTradewind Riderは1体しかないけど)。普通の5CGと異なり、 Quirion Rangerが入っていない為にForestの数を少なく押さえて2色のマナが出るランドが多用されている。
また、特筆すべきはMeekstoneとErratic Portalであろう。このデッキにはパワーが2を上回るクリーチャーは入っていないので、Meekstoneとは相性がいい。もっとも、極端なクリーチャーデッキ以外はパワーが2を越えるクリーチャーを入れてくることはないので、どこまで有効かは疑問符が付く。ウイニーデッキは2マナ以下でパワー2のクリーチャーだけだし、コントロール型のデッキやバーンデッキはほとんどクリーチャーを使わない。
Erratic Portalは本来の使い道とは別の使い方がされている。 ArmageddonやWinter Orb,Tradewind Riderによるマナ・オーバーロードなどでマナが拘束されている場合、このカードはかなり有効なクリーチャー除去カードになる。再び召喚するマナはおろか、バウンズするのを防ぐためのマナすらないのだから。もっとも、確実に除去を実現するためには重ねて使用する必要があり、3枚も投入されている。
サイドボードは、先に述べた理由で使いものにならなくなったMeekstoneとの交換要員となるカードが主に用意されている。本来なら、同じくWinter Orbを使うデッキとの交換要員(相手のマナクリーチャーをまとめて殺すSimoonやマナ・アーティファクトをまとめて除去できるEnergy FluxやHurkyl's Recall、追加のカウンターやアーティファクト・エンチャント除去、カウンターをカウンターするためのPyroblustなど)も用意しておきたいのだが、山梨の大会ではそんなデッキは少ないだろうから、必要ないのかも知れない。
それともう1つ、原型となったデッキと比べると、レアなカード、特に値段の高いカードは少なく、替わりに安いカードやレアリティの低いカードでその穴が埋められている。乏しいカード資産の中で、上手にやりくりして良いデッキを構築し、ちゃんと結果を残しているのは素晴らしい。
予選を突破したデッキ達の強さのエッセンスを探ろうとしたのだが、後半では逆に、こうしたら強くなる、と言うデッキ診断になってしまった。それはつまり、もっと強くなる余地が残されていると言うことだろう。