4マナ3/3クリーチャーの世界  〜6版後のスタンダード

 これは、99年4月の基本セットの改訂によってスタンダード環境にどう影響が出るかを手短に論じる文章である。ちなみに、執筆された時期はスポイラーの発表があった直の4月末であり、著者は山梨という片田舎に在住している。おまけにここ2年ほど、大都市での大会にも参加せず、地元の大会ですら成績を残していない。スタンダードの趨勢を読み誤っている可能性を否定できないことを先に指摘しておく。

 黒編
 NecropotenceとPoxが消えたことにより、これらのカードをキーカードとしたコントロール系デッキは亡くなった。スタンダード環境に変化をもたらすのが目的だったらしいので、これらのカードは7版以降で再登場の可能性はあるだろう。
 また、Bad MoonとUnholy Strengthが落ちている。超速攻デッキである自殺黒の弱体化を狙ったものだと思われるが、肝心な主要クリーチャーが何1つ無くなっていないので、影響は小さい。これらのカードの代用と言うには効果の大きいHatretが残っているので、この手のデッキは11月まで安泰だ。
 また、Rats,Hidden Horrorの追加もこの手のデッキにとっては好材料であろう。むしろ、後述する赤のクリーチャー除去能力の低下によって相対的に強化されたとも言える。
 Vampiric Tutorの追加は、コンボ系デッキにとっては福音だが、スタンダード環境で最も成功率の高い即死デッキはHatred型の自殺黒である。
 また、手札破壊能力がかなり向上している。ミラージュブロックの手札破壊カードが丸ごと追加されたからだ。対カード効果の高いStupor、ターン破壊能力を併せ持つAgonizing Memories,Painful Memoriesは共に黒に新しいデッキコンセプトをもたらすであろう。
 なお、Drain Life,Dark Ritual,Animate Deadが落ちたことを嘆く向きもあるかもしれないが、Drain LifeはNecropotenceがない今は影響がほとんどなく、Dark Ritualは追加エキスパンションに入り続けるので問題なく、Animate Deadに至っては他に優秀なカードがあるので影響は全くない。

 赤編
 IncinerateのShockとの置き換え、BallLightning,Nevinyrral's Diskの消滅、X火力の減少と効率悪化と、悪材料の多さは最も多いだろう。特に円盤は、今まで優位に立っていた白のダメージコントロールに対する切り札の片割れであり、Cursed Scrollが現れる前に逆行する結果となった。入ってきたカードでめぼしい物はAether Flash,Hammer of Bogardan,Talruum Minotaurぐらいである。
 さて、赤の最大の役割はクリーチャー除去であるが、主役がIncinerateからShockへと弱体化した。つまり、今まで除去できたのがタフネス3までだったのがタフネス2までに下がったのだ。これは、クリーチャーの強弱関係を塗り替えるものである。スタンダードで他にある火力で実用的なものはKindle,Parchである。これもまた基本的に2ダメージの火力呪文である。そう言うわけで、相対的にタフネス3のクリーチャーが「除去されない、優秀なクリーチャー」としてピックアップされることになるのだ。その代表が追加されたTalruum Minotaurであろう。
 また、以外と見落としがちなのがPillage。赤の土地破壊能力がさらに向上したのだ。こいつはアーティファクト破壊能力も兼ね備えており、コントロール色としての赤の性能は向上としたと言えるかも知れない。
 そして、あんまり認識さていないが、6版ルールになって、トーナメントデッキに入るカードで最も得をしているのが赤のカード群である。Mogg Fanatic,Mogg Raiders,Goblin Bomberdmentなどで「ブロックした後に生贄に捧げる」と言うプレイができるからだ。これにより、ブロックしたことで戦闘ダメージが入り、なおかつ、生贄にした効果を得ることができるのだ。これにより、Mogg Fanaticはタフネス2のクリーチャーを除去できるのだ。

 緑編
 緑には、落ちて悲しむべきカードがほとんどない。敢えて言うとLhurgoyfとSylvan Libraryだろう。
 その上、入ってくるカードがかなり良い。ミラージュブロックの主戦力がほとんど帰ってくる。MaroにRiver BoaにUktabi Orangutanである。Lhurgoyfの穴を補って余りがある。これまた、赤のクリーチャー除去能力の低下が、追い風となる。もっとも、緑のクリーチャーは黒の主力クリーチャーと異なり、白のクリーチャー除去の影響を大きく受けるので、それほどでもないが。
 Desert TwisterがCreeping Moldと置き換わったのも好材料だ。パーマネント除去能力がかなり向上した。パーマネント除去と言うとCrumbleが抜けたが痛いかも知れないが、WinterOrbもStasisも落ちたので影響はない。
 結局、Sylvan Libraryが落ちて痛いのはどちらかと言うとコントロール系のデッキなので、クリーチャーでの殴り合いが強化されてコントロール系のウエイトを下げるというWotC社の意向を大きく反映した色だと言えよう。

 白編
 落ちためぼしいカードと言うと、プロテクション持ちの騎士。この辺は、白単でウイニーを作る、という場合以外は代用となるカードがいくらでもあるので現状では問題なし。白メインの5色が若干パワーダウンしたと言う所だ。後はIsland SanctuaryとBlinking Spiritだが、これらは使う人間が絶えて久しい。やはり、この辺もコントロール系のカードである。
 また、緑と同様に追加されたカード、特にクリーチャー除去方面に強力な物が多い。と言っても、緑ほどの派手さには欠ける。何故ならそれらのカードがあった時期はSwords to Plowsharesの天下であり、Exile,Reprisal,Tariffと言ったカードは日の目を見なかったからである。まあ、これらのカードが比較的大型クリーチャーに効果が高い事は、ウイニー天下である現在のスタンダードでの有効性に疑問を投げかけるが。

 青編
 個人的には一番損失の大きい色だと思っている。確かに主力カードは抜けていないが、青の嫌らしさを支える「いぶし銀」なカード達がかなり消えているのだ。具体的に挙げるとBinding Grasp,Brainstorm,Energy Flux,Flood,Force Spike,Hurkyl's Recall,Hydroblast,Magical Hack,Portent,Ray of Command,Sleight of Mind,Time Elemental,Twiddle,Unstable Mutationなどである。青の除去やコントロール奪取、デッキ圧縮、書き換えなどを担ってきたカード達である。彼らがいなくなると、もはやカウンターと巨大飛行クリーチャーしか残らないと言っても過言ではない。
 また、青で抜けた主力カードにStasisがある。芸術的なデッキの数々がスタンダードから消えるのだ。悲しい限りである。
 さて、追加されたカードを見てみよう。
 デッキ圧縮手段としてAncestral MemoriesやDream Cache,Inspiration,Library of Lat-Namは重すぎる。Browseは単独だと使い物にならない。
他のカードだと、Mana Shortは今更の感がある。評価できると言ったらMystical Tutor,Relearn位か。

 アーティファクト編
 Winter OrbとFeldon's Caneがなくなってコントロール系デッキが組みにくくなった。
 Nevinyrral's Diskが落ちたのは、色事の特色(=弱点)が出やすくなったと言う意味で評価できる。単色デッキが減る傾向に進み、多色化ではない複色化が進むことであろう。本来的なマジックに戻ったという感じだ。
 入ってきたカードの中では、Diamond系が注目カードであろうか。が、WinterOrbが消えた今、どれほどのものがあるか。それでも、Armageddon絡みのデッキ、特にMaro-geddonを強化するだろう。


 対抗色カード編
 どの色にも敵対色イジメのカードがアンコモンにあった。これが一新されている。どういう影響が出るか検証してみる。

 対黒
白:KarmaからLight of Day
緑:Lifeforceが消えた
 白がダメージから対クリーチャー特化された。白にはコントロール的側面が強いので、ダメージを与えてもなんぼの物があるか疑問だった為、良い変化といえる。
 緑の対黒カードは無くなりました。

 対赤
 青:HydroblastからChill
 白:JusticeからWarmth
 青にしてみるとパーマネント除去能力が落ちた事になるが、赤にとってはカードの対コスト効果を極端に悪化させられるので、たまったものではない。青の対赤と言うと土地破壊対策がウエイトを占める事になるので、2マナで置けて2ターン以上を稼げる事になるChillは悪くない。
 白は、本体を焼く呪文のカード効率を下げるエンチャントになった。が、赤に今更、単純なバーンで勝ち目が出るかというとそうではないので効果は薄い。むしろウイニーやスライと言ったクリーチャー偏重のデッキに効果が薄いのは致命的。

対緑
 黒:DeathgripからPerish
 青:LifetapからInsight
 黒はカウンターからクリーチャー除去。土地破壊以外の緑の呪文は生物と言っても過言じゃないので、悪くはない。そもそも、エンチャント除去の豊富な色への対抗色カードがエンチャントでは使い勝手が悪かった。
 青は使えないカードが使えないカードに置き換わっただけ。

 対白
 赤:Flashfires(変わらず)
 黒:GloomからDread of Night
 黒のGloomは全ての白呪文に効果があり、しかも既に場に出されてしまったエンチャントにも効果があった。が、それがクリーチャー限定カードに変更された。簡単に解呪されてしまうだろう。

 対青
 緑:Tunamiが消えた
 赤:PyroblastがBoil
 緑の対青カードはなくなった。
 赤は、カウンター呪文が致命的な除去呪文に変わった。しかもインスタント。青はターンエンドに隙を作るのでのそこを突くことができるだろう。が、カウンター能力がなうと所詮はなかなか通らない。


 結論
 以上を総合すると、今まで日の目をみなかった4マナ前後で3/3のクリーチャーの天下となるだろう。
 さて、各色ごとにそう言うクリーチャーを連想してみよう。5版では赤のStoneGiant、緑のWarMammot、青のPhantom Monsterなどが挙げられる。が、調べてみるとこれらのクリーチャーもまた、6版には収録さていなかったりするのだった。
 また、デッキタイプだと、Hatret型自殺黒・Maro-Geddonが台頭してきそうな予感がする。個人的には、この環境なら青白のコントロールデッキを構築するだろう。

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