遅延行為の目的と判別方法

遅延行為とは、時間無制限で推移した場合に敗北する試合を、大会運営上の制約、つまり制限時間を利用することで敗北を回避する事を目的とする行為である。
長考とは区別されるべき行為である。時間無制限で推移した場合でも勝てる見込みがあって勝ち筋を探すのに時間がかかっているのが長考である。もっとも「勝てる見込みがあって長考していたら、時間切れで勝っちゃた」などと白々しく遅延行為を長考としてレポに書く輩も存在するのだが。
また、勝てる見込みがあるのを前提で、対抗手段が手札にあると誤解させる目的で、手札にないカードを使おうか悩むフリをするのも、遅延行為とは別物だ。この手のブラフは許容されるべきである。もっとも、相手に対抗手段があると認識させるのには、時間切れが発生するほど長い時間を考えるフリをする必要はないのだが。

では、どういう状況で遅延行為をすれば敗北を逃れられるのか。つまり、遅延行為を行われやすい状況とはどういう場合かを考えよう。
まず、スイスドローで行われることの多い予選大会。この場合、時間切れ=引き分けなので、敗北が避けられない状況=遅延行為の行われる状況だと言える。極端な例を出すと、試合開始後5分でステラ3段をプレイされた場合でも、残り20分を遅延行為すれば引き分けに持ち込める。
次にシングルエルミネーションで進められる決勝大会ではどうか。この場合、時間切れになったら得失点差によるタイブレイクが行われる。タイブレイクは、まずその試合で与えたダメージを見る。それが同じ場合、その大会での累計の与えたダメージを見る。スイスドローの場合と違って、敗北必死の状況でも与えダメージで負けていては遅延行為で敗北を逃れることは出来ない。代わりに、与えダメージで勝っていれば、無理にゲームを進めなくても、時間切れになれば確実に勝てる。
与えダメージが同じ場合は、累計の与えダメージ・得失ダメージ差を見るのだから、試合前に(相手のスコアシードに名前と受付番号を書く際に)相手の累計をチェキしておく必要がある。
余談だが、対戦相手の過去の得失ダメージを見ておくのは、遅延行為の予防以前の問題として行うべき行為である。相手のデッキ傾向を知ることが出来る貴重な情報だ。例えば与えダメージ10受けダメージ0で勝ち進んでいるなら「死の印」「ファラオの呪い」を使った焼きデッキではないと判断できる。

対戦相手が長考し始めた場合は、状況を整理し、遅延行為が行われる状況であるか考えるべきである。それで遅延行為だと思ったら、即座にジャッジを呼ぶべきであろう。対戦中の、遅延行為が始まって早い段階であるなら、比較的対処がしやすい。

では、今度はジャッジの立場に立って、遅延行為をしていると指摘された人が、遅延行為をしているか見抜く方法を考えよう。
まず、遅延行為をしている人の立場になって、その状況で遅延行為をすることで利益があるかを考えよう。場の状況を見てこのまま推移したら敗北が避けられない状況かを見極めよう。また、シングルエルミネーションであるなら、負けそうな側の与えダメージをみて、タイブレイクで勝敗がひっくり返るかもチェックするポイントとなるだろう。
利益のある状況なら、遅延行為の疑いは濃くなる。特に、残りデッキが薄かったり、手札に対処できるカードがないなら黒だ。場合によっては、残りデッキの中身を見て、対処できるカードが存在するか確認してもよいだろう。
逆に言うと、遅延行為をしてもメリットのない状況だと、完全に白で、それは単純な長考である。この場合、長考をしている人をジャッジに「遅延行為」と訴えることで、考えるのを邪魔している可能性もある。

で、遅延行為をしていた場合の対処はどうすればよいだろうか?
進行中の対戦であるなら、警告を与えた上で「時間切れになった場合、遅延行為をした人は敗北の扱いをする(試合自体は時間切れの扱いには変わらない)」とすればよいと思う。そうすれば、これ以上の遅延行為にメリットがなくなる。

お店の予選だと、客同士のトラブルであり、片方に警告を出したりするのは立場上、難しいかもしれない。下手をすると、警告を出した方を客として失うかもしれない。
が、ここは勇気を持って対処をして欲しい。
遅延行為で負けた人が「○○店の大会に出たら遅延行為を食らった。店員は何もしてくれなかった」という大会レポートを上げたなら、見た人はその店の大会を避けるようになるだろう。逆に、遅延行為などにもちゃんと対処してくれるお店だと認識されれば、大会にも足を運んでもらえるし、買い物してもらえるようになる。
私の住んでいる地域には、2つのTCG販売店があり、MTGで小学生にシャークを行う悪質なプレイヤーが居た。A店は早々に彼を出入り禁止にし、B店は彼を常連として迎え入れていた。現在、A店は存続しているが、B店は潰れてしまっている。お店が生き残るか否かは、こういう細かい事の積み重ねだと思う。

こういうトラブルを抱えない方法もある。大会の際、制限時間をなくしてしまうのだ。「負けそうになったら、遅延行為をする」なんて状況では、制限時間をなくせばそう言う輩が居なくなって、逆に大会運営時間が短くなるかもしれない。


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