その3:デッキ圧縮

 別の文章でも述べたが、デッキの総枚数が少なければ少ない程、確実にデッキが回り、事故を起こさない。その為、デッキは制限ギリギリの枚数である60枚で構築するものである。
 さらにこれを押し進めると、60枚より少ない枚数でデッキを構築できれば強いと言う事になる。だが、本当に60枚未満のデッキを使うのはルール違反になる。そこで、アイスエイジより導入されたキャントリップに注目し、低コストで使用できるキャントリップ呪文(“ウルザの屑宝石”“逆差しの六分儀”など)を大量に使用し、実質的なデッキ枚数を60枚より少なくする、と言うのがデッキ圧縮の始まりである。
 青には、単に1枚カードを引くだけのキャントリップではなく、ライブラリを操作する能力を持って、よりデッキの圧縮に向いたカードが用意されている。

 トーナメントデッキに入れるカードで、どうしても避けられないのが、コストの問題とカード・アドバンテージの問題である。
 相手のターンエンドに使う余地のあるインスタント速度のものなら、多少は重くても問題ないが、自分のターンにしか使えないソーサリー速度のものは、重いものでは駄目だ。インスタントなら6マナでもなんとかなるが、ソーサリーでは3マナ以下、できれば2マナ以下が望ましい。これは、デッキ圧縮が直接、ゲームを終わらせられる手段ではない事と、カウンター用のマナを残さねばならないと言う青の宿命ゆえの事である。
 当然、インスタントの場合でも軽いに越したことはない。引いてきたカードを自分のメインフェーズで使って、その効果で土地を手に入れて場に出したり、“神の怒り”を引いてきて使う、などといったプレイングも要求されるからだ。
 また、カード・アドバンテージの問題についてだが、カード使用前の使用後の手札枚数を比較する事で明確になる。普通はドローする枚数とディスカードする枚数を比較するのだが、インスタントやソーサリーの場合、その効果を発生させるのにカードを1枚使用していること忘れてはならない。また、キャントリップが絡む場合、ドローするまでにタイムラグが存在する場合がある。この僅かな差は、メインフェーズに使用する場合、大きく響いてくるので注意が必要だろう。

 現実的な話、キャントリップだけがデッキ圧縮手段ではない。他にもデッキ圧縮として働く効果はある。

・カードをドローする
 引いたカードがどうなるかは問題ではない。それらが全て手札にならず、捨てたりライブラリに戻したりしたとしても、手札の候補としてライブラリから参照した事には変わりない。

・ライブラリのカードを上から何枚か見る
 これも、上の場合と同じ様なものである。見たカードは好きな順番でライブラリに上に戻すか、何枚かは手札に入れて、残りをライブラリの下に戻すか墓地に捨てるかする事になるだろう。好きな順番で戻すと言うのは、本来なら後のターンにならないと引けない有効カードを先に引けると言うことだ。この場合、必要なカードは手に入れてから、何らかのライブラリシャッフル手段を組み合わせれば、デッキの圧縮はさらに進むだろう。

・ライブラリから無効なカード(大抵は土地)を抜く
 土地は完全に無駄カードと言うわけではないが、ゲームの中盤以降になると、土地よりも他のカードを引いた方が有効な場合が多い。つまりは、限界効用の高いカードなのである。“氾濫原(MI)”“湿原の大河(MI)”などのいわゆる「フェッチ・ランド」や"Thawing Glaciers(AL)"は、土地を確保する手段としてライブラリから抜き出す。これによってデッキ中の土地比率が下がり、それ以外の有効カードを引いてくる確率が高まる。
 また、ノン・クリーチャー・デッキが相手の時のクリーチャー対策カードや相手が使っていない色の“防御円”なども無駄カードに相当する。これらを自分のライブラリから取り除けるのなら、先の土地の話と同様にデッキが圧縮されたことになる。

・ライブラリ中の有効カードの枚数を増やす
 上の例とは逆に、デッキ内に有効なカードを補充することで、実質的にデッキ内の無駄カードの比率を下げることが出来る。この場合、補充する元は自ずと墓地となる。普通は、墓地には使い終わったスペルや除去されたクリーチャーが溜まっていて、土地はない。土地がある場合は、何らかの手段で土地が破壊されている場合であり、その時は土地は必要なカードなのである。つまり墓地は、常に有効なカードの集まりだと言えるのだ。