「場の支配」

 マジックは場を支配したプレーヤー、正確には最後まで場を支配する事ができたプレーヤーが勝つゲームである。
 「場の支配」とは、あり大抵に言えば自分が有利な状況の事である。マジックでの勝利とは相手が敗北条件を満たす事であるから、その為に相手のライフもしくはライブラリを削る事ができ、なおかつ相手が先に負ける状態が「場を支配」している状態である。
 この文章では、どの様な状態が「場の支配」にあたるか、そしてそれがどの様な理由によるものかを知ることで、支配の仕方・支配の維持・相手の支配を覆す方法をなどを学び、マジックで勝つための方法論を身につけてもらうのが目的である。

(1)クリーチャーによる支配
(1−1)クリーチャー支配の基本原理
単純な事を言えば、相手のものより大きいクリーチャーがいるなら(他の要因がない場合)それは場を支配しているといえる。自分の場に2/2クリーチャーが2体いて相手の場には5/5クリーチャーが1体いる場合、数ではこちらが多いのにもかかわらず場を支配しているプレーヤーは相手と言うことになる。
この状態で相手が攻めてきた場合、こちらのクリーチャー全てでブロックしても相手の5/5クリーチャーを殺すことはできず、こちらのクリーチャー2体は一方的に死んでしまう。不利を承知でブロックするかブロックせずに5ダメージを受けるしかない。また、相手の5/5クリーチャーが残っているならこちらは不用意に攻撃できない。1体がブロックされずに2ダメージ与えても片方はブロックされて一方的に死ぬ。
一方的に死ぬと言うことは、こちらはカード1枚を失うが相手は何も失わないと言うことだ。だから、一方的に死ぬ攻撃や防御はカード・アドバンテージの面から言って普通は行われない。当然、カード・アドバンテージより重要なものがあるような特殊な状況なら話は別である。先の例なら、相手のライフが2以下の場合。勝負に決着するならカード・アドバンテージも関係ない。また、自分の残りライフが5を切っていてる状況なら2/2クリーチャーを犠牲にして敗北を先延ばしにするだろう。こうして粘っている間に何らかの方法で相手の支配を覆せる可能性が出てくるかもしれない。
では、相手の支配を崩すにはどうすればよいか。一番簡単なのは、最初にも述べた通り、相手より大きいクリーチャーを得ることである。6/6クリーチャーを召還しても良いし、相手の5/5クリーチャーのコントロールを奪っても良い。また、エンチャントなどで自分のクリーチャーを強くしたりしてもよい。そうすれば、今度は自分が場を支配することになる。
もう1体、今度は1/1のクリーチャーが出てきたならどうだろうか。この場合、3体のクリーチャーでブロックすれば5/5クリーチャーと相打ちが取れるので相手の支配は失われた事になる(ただし、こちらが支配を得たわけではなく均衡状態になっただけである)。ブロックできるという事は複数のクリーチャーのブロックでそのクリーチャーを除去する事も可能なのである。これもカード・アドバンテージ的には不利な方法だが、ゲーム自体に負けるよりはカード・アドバンテージを失った方がまだましである。

(1−2)相手に支配を与えないクリーチャー
ある種の能力は小さなクリーチャーで巨大クリーチャーによる支配を逃れる事を可能にする。先の例で言えば、自分側の2/2クリーチャーがこれらの能力を持っていたなら相手は場を支配していることにはならないのである。 まずは「再生」。これは1体のクリーチャーの攻撃を延々と防ぎ続ける事ができる。そして、この能力は攻撃に使用したもそれなりに有効だ。もっとも再生能力は無効にされる除去手段が多いのでそれほど有効とは言い難い。“虹のイフリート”などのフェーズ・アウトするものや“ブリンキング・スピリット”などの手札に戻る能力といった『死なない能力』も同様な働きをする。また、色が合っている場合の「プロテクション」も、死なないブロッカーとなる。
 他にクリーチャーがたくさんいるなら「バンド」もそれなりに有効な能力である。ダメージ配分をこちらで決められるので、最高の効率でもって相手の攻撃クリーチャーをブロックできる。もっとも大量にクリーチャーを並べることは、全体破壊呪文によって一気にカード・アドバンテージを失う事に直結するので、現実的には有効とは言い難い。

(1−3)支配を得るのに有効なクリーチャー
 1−2で言ったことを裏返せば、単に数値的に大きいだけのクリーチャーでは簡単に支配を覆されてしまうと言う事だ。そこで重要になってくるのが各種の特殊能力である。
 まず、「飛行」「シャドー」などの回避能力。これはブロックできるクリーチャーの数を大幅に減らしてくれる。デッキによっては、ブロックできるクリーチャーが1体もいないかも知れない。それゆえ、2/2程度の特に大きくないクリーチャーでも場を支配する事が可能なのだ。また「プロテクション」や「土地渡り」は色が合えば強力な回避能力であるが、裏を返せば色が合わないと役に立たないと言う事である。
 「プロテクション」は特に相手が単色の場合、絶大の効果を発揮する。ブロックできないだけでなく、呪文やエフェクト、ローカル・エンチャントなどの対象にできないのでまず除去できないからだ。また、先述した様にブロックに回しても強い。「土地渡り」は「プロテクション」よりも強力な回避能力だが、その優位性は回避能力に限定されているのであまり有効ではない。
 また、ブロックされても相手にダメージを与え得る「トランプル」は『死なない能力』や「バンド」の効果を薄れさせる。また小型クリーチャーでブロックしての時間稼ぎもほとんど無効にできる。だが、これらの特典は場を支配することより、得た支配を維持し速やかに勝負をつける事に結びつくものであり、この為にマナ効率を犠牲にしてより重いクリーチャーを選択すべきかは疑問の残るところである。
以外に見落とされがちなのが「側面攻撃」である。タフネスを1下げるという事はタフネスが1のクリーチャーなら即死という事である。「再生」する“蠢く骸骨”もフェーズアウトする“虹のイフリート”も「プロテクション:赤」を持つ“フリーウィンド・ファルコン”も、「側面攻撃」を持つ赤いクリーチャー“スクアタの槍騎兵”の攻撃を防御したら一方的に死んでしまうのだ(“虹のイフリート”のフェーズアウトですら間に合わない。これはブロックに割り振られたことによってトリガーされるコンテニュアス・エフェクトなのだから)。

(1−4)クリーチャー除去の重要性とその対策
 クリーチャーによる支配を覆すもう1つの方法がある。それは、支配の要因となっているクリーチャーを除去してしまうことだ。これは必ずしも場から取り除かなくてても良く、タップしたり攻撃・防御を不能にしたりするだけでもよい。
 クリーチャー除去は相手の支配を覆す為だけに使えるものではない。こちらの支配を確立し維持するためにも必要な手段である。また、クリーチャー以外の方法による支配に貢献しているクリーチャーもいる。これらの除去にも必要となってくるであろう。
クリーチャー除去には2つのタイプが存在する。1つはダメージによる除去。これは、除去可能かが対象クリーチャーのタフネスに依存している点と軽減・移し替えと言ったダメージ操作系の呪文やエフェクトで妨害されてしまう点が欠点だが、相手のクリーチャーを除去する必要がなかった場合、相手のライフを減らすのにも使えるので、必ずしも無駄カードにならないのがメリットである。
もう1つはダメージに依存しない除去。これはダメージによるものと異なり、相手のタフネスに依存せずダメージ操作系の影響も受けないのが特徴だが、相手がクリーチャーレスデッキだった場合など除去の必要がなかった場合無駄カードになってしまうのが欠点である。それと、万能に使えて反動がない呪文はコスト的に問題があり、コストが手軽なものは対象が限定されていたり反動が大きかったりと色々と問題があるのも欠点であろう。
こう言った除去手段への耐性も、クリーチャー選択での重要な要因となる。「再生」や『死なない能力』は除去手段への耐性となる。また「プロテクション」も対象とならない事から除去手段への耐性となる。そういった呪文の多い赤や黒への「プロテクション」は強力なものである。
『呪文や効果の対象にならない』という能力をもったクリーチャーも存在する。デッキによっては、そういったクリーチャーへの対処能力を欠いているものもあるので、非常に有効だ。
 ダメージによる除去に対抗するためタフネスの高さにも注目してもよい。この場合、“モグの狂信者”“スクアタの火渡り”“ギルドメイジ”によって除去されないタフネス2以上や“火葬”によって除去されないタフネス4以上はその生存率が格段に異なる。

(1−5)クリーチャーによる支配の本質とそれを利用した無効化
クリーチャーだけ見れば場を支配しているように見えるが実際に場を支配しているのは別のプレーヤーという場合がある。これは、クリーチャーによる支配を本質的に無効化しているからだ。
クリーチャーによる場の支配の本質とは、クリーチャーによって「(a)ダメージを与える」事であり、その為には「(b)戦闘に参加」しなければならない。そして、それを可能にするためににはクリーチャーが「(c)アンタップ」状態でなければならない。このどれかを制限されれたなら、クリーチャーによる支配を無効化されてしまう。
(a)を制限する手段として各色の“防御円”がある。色毎なのが柔軟性を欠くが、必要に応じて書き換えるなりチューター類で引いてくるなりすれば良い。柔軟性で言えばコストは重いがバイバックを持つ“不死身”がよい。また、様々なライフ回復手段で相手の与えるダメージ以上にライフを得れるのなら実質的に無効化できる。
 (b)を制限するカードには“プロパガンダ”“孤島の聖域”がある。“プロパガンダ”はマナ拘束を伴わないと完全に制限できない(といっても、単体でも十分に強い)。“孤島の聖域”は他のドロー手段(“吼えたける鉱山”“ミューズの囁き”など)と組み合わせないとカード・アドバンテージの差でいずれ逆転されてしまう。
(c)を制限するものは“停滞”がある。これについては後述する。

(2)マナ拘束による支配
クリーチャーやその他の呪文を唱えるのには何が必要か。ごく一部の例外を除いて、必ずマナが必要である。故に相手がマナを得ることを妨害できるなら、相手はほとんど何もできなくなる。完全に妨害できなくとも、使えるマナの数が少なく制限されてしまえば、相手は行動の自由をかなり失う。つまり、相手のマナを拘束できるならそれは場を支配する事になる。
 マナ拘束は“プロパガンダ”組み合わせることでクリーチャーの攻撃を封じる事ができる。また、“ペンドレルの霧”“魔力流出”などアップキープコストを与えるカードと組み合わせればパーマネントを場に置くことも許さない。もっとも“魔力流出”などはアーティファクトを多用したマナ拘束型デッキへの対策として使われるので注意が必要だ。
(2−1)アンタップ制限
マナの供給源である土地のアンタップを制限できるなら、それはマナの拘束である。“停滞”と“冬の宝珠”はそれを可能にする。だが、これらのカードは相手だけでなく自分も同様に拘束する。それなら条件は一緒、などと早合点してはいけない。自分はこれらのカードが使われる事を知っているので、その問題点を避けれる様にデッキを構築すればよいのだ。
(2−1−1)“停滞”による支配
“停滞”は土地以外のパーマネントにもその効果を及ぼし、しかもアップキープコストも必要なので、それを回避する為に何らかの工夫が必要である。が、クリーチャーの攻撃もほぼ完全に封じるので、デッキを“停滞”とその維持に必要なカードだけで組んでも構わない。そして仕上げに“宿命”を張れば相手はもはや何もできない。
また、“停滞”による支配を試みるデッキはほぼ例外なくライブラリアウトで勝つデッキである。ダメージで勝とうとすると、クリーチャーや攻撃呪文などにデッキの枚数を割かねばならない。これらのカードは運用するには“停滞”が邪魔となる上、支配の確立/維持には何ら貢献しない。だが、ライブラリで勝負する場合“フェルドンの杖”1枚で事が足りる。場を支配したままターンが進めば、自然と相手がライブラリアウトする。
アップキープする具体的な方法には、
(a)毎ターン青マナの出る土地を置けるようにする、
(b)自分のターン直前に“停滞”を手札に戻す、
(c)青マナを出すパーマネントを毎ターンアンタップできるようにする、
などがある。
(a)の場合、デッキ内の土地比率を50%程にしておき、“吼えたける鉱山”“ボガーダンの金床”などドローを増やすカードを組み込んで毎ターン2枚以上のカードを引けるようにすることで、確率的に毎ターン1枚の土地を引ける様に設計する。
 これが「ターボステイシス」と呼ばれるタイプのデッキである。“吼えたける鉱山”と“停滞”の2枚だけでほとんど機能し、しかも(他の方法と異なり)クリーチャーに依存しない事がこのデッキの強みだ。
 これが進化したものとして、“資源の浪費”を入れてマナ確保をさらに容易にし、“平衡”で相手の土地やクリーチャーをフェーズアウトさせて完全に遮断してしまう「スカンダリーステイシス」と言うデッキがある。これは、“クウィーリオン・レンジャー”の登場によってアンタップフェーズがなくともクリーチャーをアンタップする事が容易になったことに対する対策として登場したものだ。
(b)に使われるのは“転覆”である。自分のメインフェーズに再び“停滞”を張ることで、“停滞”の影響を受けるのは相手だけとなる。“転覆”は同時に全てのパーマネント対策になっているカードである。テンペスト登場前は“時の精霊”がこの手法に利用されていた。が、やはりクリーチャーと言うことで安定性に疑問があった。なお、テンペストの“貿易風ライダー”でも同様の事ができるが、やはりクリーチャーと言うことで信頼性が低い。
(c)は、“極楽鳥”“クウィーリオン・エルフ”などを“賦活”“クウィーリオン・レンジャー”などの効果でアンタップする、と言うものである。他にも“大地の知識”を使った方法など様々な手段はあるが、いずれも例外なくクリーチャーに依存したものなので信頼度が低い。また、青以外の色、しかも敵対色である緑を利用したものが多い事が、困難さに拍車をかけている。

(2−1−2)“冬の宝珠”による支配
“冬の宝珠”はアップキープコストがかからない点と土地にしか影響を及ぼさない点、アーティファクトなのでタップすることで自分だけ影響を回避できるのが強みである。それは相手も同じ事で、土地以外のパーマネント対策も必要になってくる。
各種“ダイアモンド”などのアーティファクト・マナソースや“ラノワール・エルフ”“極楽鳥”“根の壁”などのクリーチャー・マナソースは“冬の宝珠”の影響なくマナを供給してくれる。また、“知られざる楽園”や“クウィーリオン・レンジャー”などの「土地が手札に戻る効果」は、再び土地を(アンタップ状態で)場に出せると言う事で“冬の宝珠”影響下でのマナ供給を助ける。自分のデッキにこういうカードを組み込むと同時に、相手のこういうカードは最優先で除去しないとならない。
昔は"IcyManipulator"とのコンビネーションで相手がアンタップやセットランドした土地や即座にタップし、自分のターン開始の前には“冬の宝珠”をタップし自分はその影響を逃れる“アイシープリズン”というタイプのデッキが存在した。ストロングホールドで追加された“理性のゲーム”はこれと同じ事を可能にする。

(2−2)土地破壊
土地のアンタップを制限する方法は、キーカードを除去されるとその戦略が崩れるという脆さを併せ持っている。だが、土地自体を除去してしえばその危険性はない。
緑・赤・黒には対象の土地を破壊する呪文が豊富に揃っている。特に赤の“石の雨”や“焼けこげた土地”は赤マナへの依存度が低くて使いやすい。また“不毛の大地”も、対象が非基本地形に限られるものの、非常に使い勝手がよい。
これらの呪文は数を使わないと相手の土地を完全に除去できないが、使った分だけ確実に相手の土地は減る。
青の場合、“貿易風ライダー”や“転覆”で毎ターン土地を手札に戻すことができるなら、これも土地の拘束になる。場に出せる土地は1ターンに1枚だけである。1ターンに1枚の土地を戻せるなら相手は今ある以上に土地の数を増やす事はできなくなる。2枚以上なら土地の数がどんどん目減りしていき、最終的には全ての土地が場から失われてしまう。
白の“ハルマゲドン”は全ての土地を破壊する。自分の土地をも破壊してしまうので、これで場を支配するというより、他の手段で確保した場の支配を維持するためにつかうという意味合いが強いであろう。前も述べたが1ターンに場に出せる土地は原則として1枚である上、そう都合良く手札に何枚も土地が来るものではない。“貿易風ライダー”と組み合わせればかなり強い。また、同じ使い方が赤の“ジョークルホープス”“黙示録”でも可能である(が、土地以外も破壊するので使い方はさらに難しい)。

(3)手札破壊による支配
マナ拘束の場合と同様の思考法である。手札がなければ呪文を唱えることはできない。
しかし、基本的に手札破壊呪文はソーサリーである。つまり、自分のターンにしか使えないので、相手がそのターンに引いたカードを捨てさせることはできない。また、使い切りなので永続的に手札を破壊することができない。
もちろん、この法則を打ち破るカードも存在する。“ズアーの運命支配”がそれである。このカード、一般的な使い方は“若返りの泉”などで毎ターン2ライフ以上を確保できる状態にして相手のドローしたカードを全て捨てさせるというものである。
だが、何も全てのカードを捨てさせる必要はない。自分の支配を崩すカードだけをはねれば良いのだ。そして、そんなカードの数はそんなに多いものではない。ただし、土地を与えない戦法は良くない。デッキの3〜4割は土地なのだから。
 もう1つ“ズアーの運命支配”が抱える問題は、相手の手札によっては逆に負けが決まってしまう場合がある事である。相手の手札以上カウンターを確保する・他の手段で手札破壊をしておく・エンチャント除去手段を用意する・“ネクロポーテンス”などドローでない手札獲得手段を用意しておく、などで回避するしかない。
また、マナ拘束と組み合わせて、相手の引いたカードを使わせないと言った方法も可能であろう。“破裂の王しゃく“”深淵の死霊“など相手に捨てるカードの選択権があるカードも”ハルマゲドン“と組み合わせれば、土地を捨てるわけに行かなくなり有効に作用する。最終的には、相手の手札と土地を全て奪い去ることが可能だろう。


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